ノーベル賞制定記念日(11.27)

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1901年11月27日、ノーベル賞の第一回の授賞式が行われました。これを記念して、11月27日はノーベル賞制定記念日になっています。なお、現在では授賞式はノーベルの命日にあたる12月10日に行われることになっています。

ノーベル賞は、ダイナマイトの発明家として知られるアルフレッド・ノーベル(Alfred Bernhard Nobel, 1833.10.21-1896.12.10)が遺言で定めたものです。

ノーベルはベニヤ板の発明者イマニュエル・ノーベル(Immanuel Nobel, 1801-1872)の三男です。ストックホルム生まれですが、父がロシアのペテルスブルグで機雷製造の仕事を始めたため、家族でそちらに住んでいましたが、やがて父が事業に失敗、帰国します。そのころから彼は安全に取り扱える爆薬はないものかというのを一所懸命研究していました。

当時の主役は1847年にAscanio Sobrero (1812-1888) が発見したニトログリセリンなのですが、これは少しでも衝撃を与えると爆発してしまうので、誤爆事故が頻発しており、彼の弟のエミルも犠牲になっています。ノーベルは色々な試行錯誤の結果、ニトログリセリンを珪藻土に染みこませることを考案しました。そして導火線を付けて火で爆発させようとしたのですが、ニトログリセリンというのは、充分強い衝撃を与えれば珪藻土に染みこませた状態でも爆発する癖に、火を付けても爆発しない、こまった物質です。

そこで考えたのが雷管(primer)でした。

細い管の中で物質を急に燃やすと、ガスが物凄い勢いで膨張します。この反応が激しければ一部の膨張は音速をも超え、衝撃波が発生します。爆轟(ばくごう)という現象で、この揺れを使って珪藻土に染みこませたニトログリセリンに衝撃を与えて起爆するわけです。

(正確には雷管の発明の方が、珪藻土の利用を思いついたのより先らしい)

彼はこの新しい爆破システムにギリシャ語のデュナミス(力)からダイナマイトという名前を付け、そのあと、母国スウェーデンでは、いわゆるスウェーデン鋼の生産の現場などで、大いに役立つことになります。

また彼はこの技術を利用して武器の製造や油田開発などの事業に力をそそぎ、1896年に亡くなった時には、3100万クローネ(今のお金にすると100億円くらい?)もの資産が形成されていました。遺言状が曖昧だったため親族の間で遺産争いが起きるのですが、最終的には遺言書の趣旨に従い、資産は財団化されて、毎年、物理、化学、医学生理学、文学、平和の分野で貢献のあった人に、賞金が贈られることになりました。

これがノーベル賞の始まりです。なお財団はその後の運用や寄付などにより、現在約40億クローネ(600億円)ほどになっています。

ノーベル賞の選考は、スウェーデン王立科学アカデミーが物理・化学賞を、王立アカデミーが文学賞を、カロリンスカ大学が医学生理学賞を、そしてノルウェー国会が平和賞を担当しています。そして平和賞以外はストックホルムで、平和賞だけはノルウェーのオスロで授賞式が行われます。

この平和賞だけがノルウェーになっているのは、ノーベルの遺言にそうあったからなのですが、なぜそうなっているのかは理由不明です。

ノーベル賞の中に不自然に数学賞が無いのは、ノーベルが若い頃、数学者に恋人を奪われたせいであるなどという説もありますが、俗説の域を出ないと思います。またダイナマイトが軍事で使用されて人がたくさん死んだのを見て悲しんでこういう賞を制定したというのは、よくあちこちに書かれているのですが、彼はもともと子供の頃から父が軍事産業で働いてきたのを見ており、また自ら武器製造会社を経営していましたので、あり得ない気がします。孤独な人であったようなので、ノーベル賞には色々謎があります。

なお、しばしば「ノーベル賞は後に経済学賞が追加された」と書かれているのですが、これはスウェーデン国立銀行が1968年に設立300周年を記念して創設し運用している「ノーベル記念経済学賞」のことで、ノーベル賞とは無関係です。但し選考はノーベル賞と同じ、王立科学アカデミーが行い、授賞式も12月10日に行われています。

また数学の分野ではカナダのJohn Charles Fieldsが1936年に「フィールズ賞」を創設し、「数学のノーベル賞」と一般に言われています。こちらはノーベル賞が、過去に大きな業績を残したもののかなり年配の研究者に贈られることが多いのがおかしいとして、受賞年齢を40歳以下に限定していて「大発見をして、これからも精力的に研究をしてくれそうな研究者」に贈られることになっていて、ノーベル賞よりも敷居が高いと言われています。

日本人でノーベル賞を受けたのは次の12人です。

湯川秀樹(1949物理)  朝永振一郎(1965物理) 川端康成(1968文学)江崎玲於奈(1973物理) 佐藤栄作(1974平和)  福井謙一(1981化学)利根川進(1987医学)  大江健三郎(1994文学) 白川英樹(2000化学)野依良治(2001化学)  田中耕一(2002化学)  小柴昌俊(2002物理)小林誠(2008物理)    益川敏英(2008物理)   南部陽一郎(2008物理) 下村脩(2008化学)    鈴木章(2010化学)    根岸英一(2010化学) 山中伸弥(2012医学)

またフィールズ賞は小平邦彦(1954)と広中平祐(1970)と森重文(1990)が受賞しています。

(2005-11-26)(2013-01-01 受賞者リストを改訂)



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