この紋所が目に入らぬか

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■フレーズ
(1) 鎮まれ鎮まれ(数回繰り返す)
(2) この紋所が目に入らぬか(と言って葵の御紋の印籠を掲げる)
(3) こちらにおわす御方(おかた)をどなたと心得る?おそれ多くも前(さき)の副将軍、水戸光圀公にあらせられるぞ。
(4) 御老公の御前である、頭(ず)が高い、控えおろう。


1969年から2011年まで実に42年間にわたって続いた時代劇『水戸黄門』のクライマックスの有名なシーンのセリフである。シリーズは主役を交代しながら長く続いており、制作陣もかなり入れ替わっていることから、上記のセリフにもかなりぶれがある。印籠をかざして「おそれおおくも」というのも、後年には格さんがするのが定着したが、初期の頃は不安定で、助さんがしたり、ある時は八兵衛がしたこともあるらしい。

通称・水戸黄門は、徳川御三家のひとつ、水戸徳川家の前の当主で、通常は徳川光圀(とくがわ・みつくに)と呼ばれる。生まれは寛永5年(1628)6月10日、亡くなったのし元禄13年(1700)12月6日である。水戸藩主を務めたのは、寛文元年(1661)8月19日から、元禄3年(1690年)10月14日までである。

官位としては権中納言になっており、中納言の漢名から黄門と呼ばれる。他に梅里という号もある。

光圀には同母兄の頼重がおり、光圀は兄を差し置いて自分が跡継ぎに指名されたことに負い目を感じていた。それで、自分の跡継ぎには、頼重の子の綱方を自分の養子にして指名し、自分の子の頼常を兄の養子にして讃岐国高松藩を継がせている。

光圀は三代将軍・徳川家光の従弟であり、“光圀”という名前も家光の偏諱を受けたものである。徳川綱吉の時代には、徳川家の長老として幕府の中でも強い影響力を持ち、綱吉に生類憐みの令をやめるよう忠告したりもしてている。藩主をしていた頃から、日本の歴史をきちんと記録していかなければと思い立ち『大日本史』の編集を始め、これは明治時代に至るまで続けられた。この編集作業からいわゆる水戸学が生まれている。

藩主引退後は西山荘に籠もり、悠々自適の生活を送っていたのだが、若い頃から名君の誉れがあった。そういったことを背景に、江戸時代の後半頃から、引退した水戸光圀が庶民の姿に身をやつして、少数のお供をつれて、関東一円を旅するという物語が、講談や歌舞伎などに登場するようになる。やがて旅する範囲は全国に拡大して、水戸黄門漫遊記が成立するのである。

映画やドラマで、水戸黄門を演じた役者としては、尾上松之助、大河内傳次郎、月形龍之介、など様々な人がいるが、何といってもこのシリーズ(『ナショナル劇場』)の第1期から第13期まで黄門を演じた東野英治郎の存在感は大きく、今でも東野以外の黄門は認めん、と言う人も多い。

なお、『ナショナル劇場』(後に『パナソニック・ドラマシアター』)で水戸黄門を演じたのは下記の人たちである。

1-13期(1969-1983) 東野英治郎
14-21期(1983-1992) 西村晃
22-28期(1993-2000) 佐野浅夫
29-30期(2001-2002) 石坂浩二
31-43期(2002-2011) 里見浩太朗

但し石坂版については、石坂本人の強い意向で、様々な設定が変更されており、このシリーズの作品ではなく、別系統の作品とみなす人も多い。里見版で諸設定が元に戻され、石坂版は“無かったことにされている”。里見浩太朗は東野・西村時代に助さん役を第3期から第17期まで務めている。

この『ナショナル劇場』版では物語のパターンが定式化されており、しばしば“水戸黄門的ワンパターン”などと呼ばれる。

登場人物:−
水戸黄門(越後の縮緬問屋の隠居“光右衛門”と称する)
佐々木助三郎(助さん)
渥美格之進(格さん)
風車の弥七(中谷一郎が長く務める)
霞のお新(14期まで。演:宮園純子)
かげろうお銀(16期以降。お新の事実上の後任。演:由美かおる)
うっかり八兵衛(高橋元太郎が長く務める)

黄門と常に行動を共にしているのは、助さん・格さん・八兵衛で、弥七とお新は概ね周辺で情報収集などをしている。

黄門一行が旅をしていると、困ったことになっている庶民と遭遇し、それを助けたりしている内に、権力者の横暴や悪巧みが判明する。そこで黄門・助さん・格さんが現場に乗り込み、悪事を指摘すると、悪人は黄門たちを始末しようとする。ここで助さん・格さんが黄門を守って戦う。そしてある程度経過した所で、黄門が「もう良いでしょう」と言い、冒頭の台詞で身分を明かすと、悪人達は驚き、みな平服して、黄門の指示を受け入れるというものである。

藩主など、地位のある人物を呼んで処分を委ねる場合もある。また京都の公家が「麿は徳川の家来ではない、帝の臣じゃ」と反発した場合もある、この反発する公家を演じた人は2人いるが、一人は蜷川幸雄が演じている。水戸黄門の歴史に残る名シーンのひとつである。

このシリーズの第1回は1969年8月4日に放送されたのだが、筆者はちょうど祖父の家に遊びに行っていて、この第1回放送を見ている。もっとも覚えているのは火事のシーンと、それが鎮火した後、疲れてのぴている助さんだか格さんだかに、黄門が声を掛けるシーンだけである。

(2020-06-02)

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