日本音律
日本音律の音名
まずは音名とそれに近い西洋音律の名前をあげる。具体的なピッチは後述。これを十二音律と言う。
壱越 D いちこつ
断金 D# たんぎん
平調 E ひょうじょう
勝絶 F しょうぜつ
下無 F# しもむ
双調 G そうじょう
鳧鐘 G# ふしょう
黄鐘 A おうしき
鸞鏡 A# らんけい
盤渉 B ばんしき
神仙 C しんせん
上無 C# かみむ
壱越 D いちこつ
十二音律の決め方
十二音律の音高の決め方は通常、基本音(壱越)から始めて、順八逆六法と順六逆八法を適用して決める。
順八逆六法
順八というのは、半音8個上つまり完全五度上(例えばド→上のソ)、逆六とは半音6個下つまり完全四度下(例えばド→下のソ)に進むことである。

それで基本音の壱越(D)から次のように進む(▲は5度上、▽は4度下)。
壱越(D)▲黄鐘(A)▽平調(E)▲盤渉(B)▽下無(F#)▲上無(C#)▽鳧鐘(G#)
順六逆八法
こちらは上記と逆に、順六(完全四度上)と逆八(完全五度下)を交互に使用する。壱越から次のように進む(△は4度上、▼は5度下)
壱越(D)△双調(G)▼神仙(C)△勝絶(F)▼鸞鏡(A#)△断金(D#)▼鳧鐘(G#)△上無(C#)▼下無(F#)
それぞれ何個使うのか?
3の冪乗は2の倍数ではないため、順八逆六法で12音決めてしまった音律と、順六逆八法で12音決めてしまった音律は一致しない。実際の音律では両者を折衷して使用している。ここで、諸氏の研究により、少なくとも明治初期の段階で、雅楽は(6,5)すなわち、順八逆六法で6音(壱越D→鳧鐘G#)・順六逆八法で5音(壱越D→断金D#)、俗楽では(3,8)すなわち、順八逆六法で3音(壱越D→盤渉B)・順六逆八法で8音(壱越D→下無F#)、決めていたことが推定されている。
日本音階の周波数
俗楽(3,8)で黄鐘437Hz(*1)として各音を決めた場合、各音の周波数は下記のようになる。なお西洋音階の周波数は現代では440Hzが基本とされるが、比較のため437Hzで計算したものを下にはあげる。
日本 西洋 ピッチ差
音階 音階 (cent) 尺八
神仙 259.0 C4 259.8 ( 5.9)
上無 272.8 C#4 275.3 (15.6)
壱越 291.3 D4 291.7 ( 2.0) ロ
断金 306.9 D#4 309.0 (11.7)
平調 327.8 E4 327.4 (-2.0)
勝絶 345.3 F4 346.8 ( 7.8) ツ
下無 363.8 F#4 367.5 (17.6)
双調 388.4 G4 389.3 ( 3.9) レ
鳧鐘 409.2 G#4 412.5 (13.7)
黄鐘 437.0 A4 437.0 ( 0.0) チ
鸞鏡 460.4 A#4 463.0 ( 9.8)
盤渉 491.6 B4 490.5 (-3.9)
神仙 517.9 C5 519.7 ( 5.9) リ
上無 545.6 C#5 550.6 (15.6)
壱越 582.7 D5 583.3 ( 2.0)
(*1)平安時代に吉備真備が唐から持ち帰った銅律管の黄鐘の音が437Hzである。また、1885年に開かれたロンドン発明品博覧会に、日本から「雅楽琵琶の平調を示す音叉列」、「俗筝の平調子を示す音叉列」、「日本音楽十二律を示す音叉列」の 3 種類の音叉列が出品された。 この音叉の周波数を測定したところ黄鐘が437Hzだったらしい(A.J.エリス著, 門馬直美訳「諸民族の音階−比較音楽論」)以上の情報は
中喜重「日本音楽十二律の推定の再検討」による。
コメント
ただ、この音設定はあくまで標準設定(壱越系とでもいうべきか)であって、実際の箏などの調弦では、調子によっては、特定の弦を少し低めに調弦したりする。例えば平調子では、A#とD#に相当する所を少し下げる。
日本音階はピタゴラス音律なので、壱越ではなく他の音を基本にして演奏する場合、音を再調整しないと響きに問題が出てくる。。
(2012.9.20 周波数一覧)
(2021.3.13 調律図)
(2022.5.18 十二律の解説を加える。周波数再計算)
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