06.地球トンネルと重力列車
地球の反対側までまっすぐ開けたトンネル
これは高校1年の物理の問題である。
地球上の点Aから、ちょうど裏側の点A’へ、地球の中心を通るまっすぐのトンネルを作ったとする。このトンネルに充分丈夫なボールを落とした時、そのボールはどのような動きをするか。ただし簡単のため、摩擦や空気抵抗は考えないことにし、地球は均一な密度 ρ の球体であると考える。
この場合、
中空惑星の考察で考えたように、地球内部にある質点は、その地点より内側にある物質からの引力のみを受ける。
従って、地球の中心から距離 r の位置にある物体に掛かる万有引力は
\( F = \frac{GMm}{r^2}, M=\frac{4}{3}πr^3 ρ \)
で
\( F = \frac{\frac{4}{3}Gmπr^3 ρ}{r^2} = \frac{4}{3}Gmρπr \)
となって、
rの一次関数で表されることになる。つまりこれは単振動ということになるので、単振動の方程式により、この振動の周期は
\( T = 2π\sqrt{\frac{m}{K} }, K=\frac{4}{3}Gmρπ \)
で代入して整理すると
\( T = \sqrt{\frac{3π}{Gρ} } \)
となる。
ここで、G= 6.67430e-11 ρ=5.51e3 (kg/m
3) を代入すると、T= 5062秒(84:22)となる。物が地球の裏側まで到達するのに必要な時間はこの半分で、2531秒(42:11)ということになる。
任意の地点までのトンネル
上記では地球の裏側まで掘ったトンネルを考えたが、任意の地点AとBの間に掘ったトンネルではどうなるだろうか。
その場合でも、トンネル内の物体に掛かる力は中心を突き抜けるトンネルの場合と同じである。従って、単振動の周期も変わらないので、所要時間は全く変わらないことになる。
つまり地球トンネルというのは、どこまで掘ったトンネルでも、距離に関係無く42分で地球上のどこへでも到達することができることになる。
この計算結果は、かなり古い時代から知られており、地球トンネル(earth tunnel)とこのトンネルを走る重力列車(gravity train)という構想も昔からある。藤子不二雄の「みきおとミキオ」など、昔からSFにはこの地球トンネルのある世界を描いたものは多い。
しかし現実問題として、そういうトンネルを掘る方法、また高温高圧のマントルの中で安定して存在しうるトンネルの材質や構造が、現在の科学では実現困難なので、遠い将来への課題ということになるだろう。
なお地球トンネルのルートとしては、サイクロイドにするのが最も適切であることが知られている。
(2021-08-19)

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