←↑→ (03)多様化する詐欺師たち
今年最も目立った詐欺事件は「オレオレ詐欺」と「架空請求メール」でしょう。

五十音順の電話帳で個人の名前を見ていき、老人にありがちな名前をピックア
ップし電話を掛けて「おれおれ」と言います。相手が「○○ちゃん?」と言う
と「うん」と言い、事故を起こして治療費を払わなければとか、ヤクザに捕ま
って脅されていると言って、孫可愛さに動転している老人からまんまとお金を
騙しとるもの。女性の犯人の場合「妊娠して中絶の費用がない」などと言うの
もあります。初期の頃は友人を称して直接お金を受け取りにいっていたものが、
そのうち直接の接触を避けるようになり他人名義の口座に現金を振り込ませる
ようになってきました。

架空請求は以前から企業相手に架空の請求書を手当り次第に郵送してルーズな
会社がチェックもせずに振り込んでくるのを期待するというのがありましたが
昨年の11月から電子メールに舞台を移し、アドレス屋で買ったアドレスリスト
宛に大量に送り付けるものが登場しました。私の所にもその恐らく第一陣と
思われるものが来ましたが、受信した時には何かの会員を解除し忘れてたかな
などと真剣に考えたものです。しかし落ち着いて読むと文章が破綻しています
し「今までに何度も請求したが」と書いてあるのに請求が来た覚えなどありま
せんし、そもそもこちらの名前も書いてなければ、ひどいことに金額の合計の
計算が合ってないという致命的なミスもあり、これは架空請求書詐欺のメール版
であると判断しました。

このメールはその日(11月25日)の内に2chでも話題になりましたが、こんな馬鹿
なメールに払う奴はいないだろうという意見が大勢で、わざわざ(踏み台の先
の本当の)発送元らしき所を突き止めた人、指定されていた口座を調べた人も
いましたが口座は使用不能になっていて銀行が緊急に凍結したのではないかと、
その時はみんな言っていたのですが、銀行がそうすぐ動く訳がないから単純な
口座番号の記入ミスではないかと専門家らしい人のコメントもありました。

その後の大量に出回っている架空請求メールは全てこの時のメールの模倣犯と
考えられます。私もこんなものに払う人がいるわけない。そもそも誰が心当たり
もない請求に対して何万円ものお金を払うのだ、と思ったのですがその後詐欺を
していた人たちが次々と摘発され、何千万円も集めていた人があったことを
聞いて唖然としました。払った人たちの中には多重債務者も多く、自分がどこ
からいくら借りたか分からなくなっていて、請求の厳しそうな所から順次払う
というデタラメな状態になっていた人たちもあったようです。

こういった新しい詐欺師たちが最近増殖中です。

オレオレ詐欺も架空請求詐欺も仮名口座を使用していますが、現在銀行の店頭
では本人確認が厳しいので完全に架空の名義の口座を作るのはひじょうに困難
です。しかし例えば数年前まであったのは東京で金持ちのお上りさんを装い
「うちの田舎じゃそんなのいらなかったよ」と主張して、チェックが甘い銀行
の支店でまんまと架空口座を作るなどという手口もありました。今ではこんな
のは通らないと思いますが、それでもあの手この手のやり方はあるようです。

彼らはこういう口座を印鑑とセットで数万円で販売していますが、こういう
口座を何かよからぬことをするために買おうとする人たちがいます。善良な?
業者の場合は求めに応じて新しく口座を作って送り届けるのですが変な業者の
場合、売る前にネットバンキングを設定しておき、時々監視してその口座に
入金があったら即他の口座にネットから振込みを掛けて引き出してしまうと
いうことをやられる場合があります。もともと後ろめたいお金だから訴える
わけがないと踏んだ大胆な犯行です。

こういった事情に明るい人たちは架空名義の通帳を獲得してもそれを長期間
使いません。入金があったら即引き出すように気を付けておいて1月も使った
ら転売してしまいます。なぜならその口座も既に誰かが違法行為に使ったあと
転売したものである可能性があるからです。そういうことを知らない素人が
架空名義通帳を獲得して裏ビデオの販売などに使っていたりしたら、以前に
その通帳を使った詐欺行為などがあったのを警察が内偵していて、そこから
見つかってしまうようなケースもあるそうです。

素人は悪いことはしないほうが良いです。

前回、官報に掲載された破産者にDMを出す金融業者のことを書きましたが、
この名簿を買って「官報の掲載料」を請求する詐欺師がいます。破産者の官報
への掲載料は、破産の申し立ての手数料の中に含まれていますので、改めて
請求されることはありません。これはNTTの電話帳の広告代を請求する詐欺
のバリエーションです(電話帳の広告代は電話代と一緒に引き落とされる)。

先日全国的に一部の年金の受給者の支給額を誤って高く計算して払ってしまって
いた事件が明らかになりましたが、その直後「過払い分を返してもらわないとい
けないので下記に振り込んで下さい」という詐欺が大量発生しました。侘びし
い年金で細々と暮らしている人たちからむしり取ろうとする、こういう詐欺は
おれおれ詐欺と共に、最も卑劣なものです。

これは湾岸戦争の時に多国籍軍支援のために1兆円ほど、つまり国民1人あた
り1万円程度の増税をした時「湾岸戦争の税金の徴収に来ました」といって
まんまと無知な人から1万円ずつ巻き上げていった詐欺と同じ手口です。

最近ネット上では「フィッシング」という詐欺が流行しています。Fishingでは
なくPhishing ですが意味的には fishing とほぼ同じ。「釣り」です。

有名サイトを騙って「あなたの顧客情報を更新しなければならないので下記から
アクセスしてください」というメールを大量に送りつけます。信じてしまった
人がURLをクリックすると、その有名サイトの名前に似たURLで似たデザインの
ページが表示され、氏名・住所・電話番号・メール・クレジットカード番号など
を入力させようとするものです。メールが取れたら名簿業者に売りますしクレ
ジットカードの番号など入れようものなら、そのカードで買物などをされて
しまいます。

最近の大量無差別メールは掲示板やホームページに表示されているアドレスを
ロボットを使って収集しており、この対策でffortune.netの掲示板では一週間
以上たった発言のメールアドレスをマスクして表示しない対策を取っています。
今年から本格的にスタートしたニフティのWebForumでも今までニフティIDを
堂々と表示していた方式を改めて、メールアドレスは省略できる仕様になって
おり、うちのフォーラムでもメルアドは書かないことを推奨しています。

セキュリティに慎重なサイトではだいたい似たような対策をしていると思いま
すが、大企業のサイトなどには無頓着な所も多々あるようです。メールアドレス
の入力が必須の掲示板には、一切書かないか書くとしても捨てアドレスにして
おくのが自衛策として重要です。(但しセキュリティに厳しいところは最近
捨てアドレスを排除する方向にある。荒らしに使われているからである)

大量無差別メールの中には「不要な人はここで解除を」と書かれているものも
しばしばあります。これは『オプトアウト』と呼ばれ、先日成立したアメリカ
のスパム防止法でもこれが義務づけられました。が、こんな『解除手続き』を
するのは愚かなことです。

多くのスパム業者は解除手続きをしてきた人にはそのメールは送らないように
しますが、解除してきたということはそのメールアドレスにメールが届いたと
いうことになりますので『確かに生きているアドレス』として、名簿業者に
売るのです。かくして、解除手続きをした人にはもっと大量のスパムが届く
ことになってしまいます。

不要なメールは黙々と削除する。これが最善の策です。

稀に発送元に抗議する人もいますが、抗議されて反省するような連中はいま
せんので無駄です。またそもそも発送元は善意の第三者のアドレスを擬装して
いるメールもあり、抗議する行為はしばしば単なる迷惑行為になります。

また最近HTMLメール形式で、受信者がメールソフトでプレビューすることに
より、発送者が開封されたことを検出するタイプのメールがあります。そう
するとまた「このアドレスは生きている」として名簿業者に売られます。

ですから、不要メールを削除する時は、いったんプレビューを消してから
(Outlook Expressなら表示メニューのレイアウトを選び「プレビューウィン
ドウを表示する」のチェックを外す)もしくはネットのケーブルを抜いた状態
で削除するのが基本です。

どうしてもうるさいと思う人は、スパム削除ソフトを入れて、英文メールは
無条件に削除、などというルールを設定すると良いでしょう。プロバイダで
もスパム削除機能を提供していますがニフティやdionなど大手の場合ルールが
10個しか定義できないので、まるで数が足りません。

さて私はこの夏に、こういうスパムの実際の中身はどんなものだろうと考え、
1日だけスパム削除ツールを停めて全部受信してみました。その時受信した
のは約200通ほどですが、うちウィルスメールとその副作用メールが半分。
残りはだいたい下記のようなものでした。

 ・バイアグラやHGHなどの「おくすり」の販売   54通
 ・低利でお金貸します・誰でもカード作れます     20通
 ・CATVのスクランブル解除装置や盗撮用カメラ等   20通
 ・一応まともと思える商品やサービスの販売       17通
 ・儲かる仕事あります,誰でも簡単に高収入         9通
 ・風俗,出会い,ポルノサイト,AV                   8通
 ・仕掛けがあったので危険と考え開封しなかった物 10通

繰り返しますが「1日」の受信数です。(現在は1日500通ほどになった)

この頃までは英語圏や中国語圏からのスパムが多かったのですが最近日本語の
スパムもかなり増えてきました。多いものとしては

 (1)「簡単な仕事で高収入」「在宅ワーク」(2)「ブラックでもカード作れます」
 (3)「クレジットカードのショッピング枠を現金化」

といったところ。(3)は前回も触れましたが『買取屋』と呼ばれるもので違法な
行為(横領罪)です。(1)はマルチまがい商法や講座商法です。たいてい損します。

(2)は微妙です。海外のカード取得をうたっているものが大半で、その取得の
代行をするというのですが、実際には海外の多くの国では非居住者に正規の
クレジットカードは発行しません。オフショア(*1)などではセキュアカードや
チェックカードなら取得できる所もあるようですが高額の預金が必要ですし、
必ず本人が現地に行く必要があります。これは最近テロリストの送金を封じる
ためと麻薬組織のマネーロンダリング防止のためひじょうに厳しくなっています。

実際にDMで送ってきている業者のほとんどは、高い手数料を取っただけで
単に取得の仕方のガイドブックを送って終わりというところが多いそうです。
限りなく詐欺に近い商法です。

さて、2回にわたってダークな話をしたので次回から数回は少し明るい話を
したいと思います。

(*1)Off-Shore 「沖合い」という意味で、どこかの国に属しながらその国の
  通常の経済制度にとらわれない自由な活動が許可されている特別な地域。
  タックスヘイブン(tax-haven,租税回避地)とほぼ同義。これについては後述。
  イギリスのマン島などは有名だが、実は必ずしもオフショアには分類されな
  いハワイでも日本人旅行者にチェックカードを発行してくれる銀行はあり、
  日本からならここが一番手軽である。ただし口座入金は海外送金になり
  手数料が馬鹿にならないので、まとまったお金を動かせて何十万円単位の
  お金を寝かせておける人以外には、著しく割高なものになってしまう。
  少なくとも多重債務に苦しんでいるような人には無理。


(2003-12-26)

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