←↑→ (05)お金に代わるもの
さて現在世の中にはお金以外にも多くの取引媒介物が存在しています。それを
少し見ていきましょう。

まずいちばん基本になる手形ですが、これは元々「この商品の代金はいついつ
支払います」という約束を書いた証書(約束手形)が基本と思われますが、
これは商品や原材料を仕入れた時に、それを製造販売した代金で払うことを
アテにしたものです。

本来は商品の販売が急激に伸びた時などに仕入れ代金が不足した場合に相手方に
お願いして切ったイレギュラーなものと思われますし、そういう意味では資本力
が弱い業者が使用するのが本来かも知れませんが、実際には足腰の弱い企業が
書いた手形は「本当に払ってくれるのか」という不安が付きまとうため、簡単に
は受け取ってもらえません。結果的に流通する手形はある程度実力のある企業の
ものに限られ、しかも常態化しているという矛盾した現象が起きます。本来なら
そういう企業は手形を切らなくても、現金決済する力があるはずなのですが。。。

手形の面白い所は、それが渡した相手の所に留まっておらず、どんどん流れて
いくことです。スーパーを経営するAさんが豆腐屋のBさんから豆腐を買って
手形で払った場合、Bさんは販売代金を現金で得られなかったのに原料の大豆
の代金を払わなければならない。そこでBさんは大豆問屋のCさんにAさんが
発行した手形で代金を払ってしまいます。こういうことをする場合はBさんは
手形に「私が譲渡しました」という証に「裏書き」をすることが義務づけられ
ています。そしてCさんはその手形を大豆を出荷している農協に裏書譲渡する
かも知れない、という訳でAさんが発行した手形はAさんも知らない所へと
どんどん流転していきます。

そしてAさんが約束していた期日が到来した時に手形を持っていたMさんは
Aさんに手形を見せて「ではこのお金を払って下さい」といえば良い訳です
(実際は銀行に取り立てを依頼する)。AさんはMさんに全然面識がなくても
自分の発行した手形を持っている限り払わなければなりません。

さて手形が無事決済できた場合は問題ないのですが、ここでAさんが現金で
払えないという事故が起きる場合があります。多くは予想した通り商品が売れ
なかったため、現金を回収できなかった場合です。この場合手形は「不渡り」
となりますが、その場合、手形を持っている人はこの手形に裏書きをした人に
支払いの請求をすることができます。

裏書きが連続していてたとえばA→B→C→………→J→K→L→Mと渡って
きていた場合は、MさんはまずLさんに請求します。この時Lさんは(自分も
倒産したくなかったら)手形代金をMさんに払った上で今度はその手形でKさ
んに請求します。Kさんも(自分が倒産したくなかったら)その代金をLさん
に払った上で今度はその手形でJさんに請求します。こうして不渡り手形は
どんどん「遡及」して最後はBさんの所まで来て再びAさんに請求が行きます。

手形にはこのような仕組みがあるため、発行者に必ずしも信用がなくても、
裏書きしている人に信用がある場合はその手形は裏書人の信用で流通する場合
があります。また、裏書きした人が誰も支払い能力がなかった場合、手形を
発行した人から裏書きした人の全員が一気に倒産に追い込まれる「連鎖倒産」
を引き起こす場合もあります。

なお手形を受け取ったはいいが、特に回す先もなく、かといって期日まで寝か
せるだけの資金力がない小さな会社ではこれを「割引」に出す場合があります。
これはそのようなことをしている金融機関などに裏書き譲渡して現金を早めに
受け取るものですが、実際にはその手形を担保にした借金に近いもので割引料
という名目でしっかり金利を取られます。また裏書き譲渡ですから万一不渡り
になったら額面の金額を即支払わなければ自分の会社も倒産に追い込まれるの
で、なかなかリスクの高い処理になります。

手形取引にはこのようにリスクがあるものなので近年の特に若い企業は基本的
に手形を発行しない、万一受け取らざるを得なかった場合も裏書譲渡はしない
というところが増えています。銀行が企業の信用を鑑定する場合も手形を発行
していない所はポイントが高いようです。また最近不況で企業の倒産が相次い
だ結果、かなり大きな企業の手形でも受け取ってもらえない場合もあります。
将来的に日本では手形取引は消滅する可能性もあります。

さて手形は期日を指定してその日に代金を払いますというものですが、期日は
無く、すぐ払いますというのが「小切手」です。小切手はそこに金額を書いて
署名すればそれがお金の代用をする、という便利なもので、小切手帳の所有者
が銀行に開設している当座預金を利用して決済するものです。小切手を受け
取った人は誰でもいつでもその銀行に行って提示すればお金を受け取ることが
できます。万一その時に当座預金の残高が不足している場合はその小切手は
不渡りになってしまいます。

(なおルーズな企業の中には受け取った小切手をすぐに現金化してくれない
所があり、これは逆に発行した側が混乱して困ります。あまり長期間放置され
ている場合は経理担当者がたまらず向こうの経理担当者に電話したりします)

小切手は手形に見られるような期限の利益はないのですが、それでも小切手が
使用されるのは高額の取引のときにいちいち現金を使用するのは強盗などに
襲われたりするのが怖いからです。

小切手は現代の日本では「銀行渡り」にするのが普通です。小切手の肩の所に
斜め線を入れておけば銀行渡りの印となり、この場合小切手を銀行に持ち込ん
だ人はその場で現金でその金額を受け取ることはできず、必ずその人の口座へ
の入金という形になります。こうするのは万一小切手を落としたり盗まれたり
した時に、悪意のある人がそれを換金してネコババするのを防ぐためです。

企業などでは小切手を「先日付」で発行する所がしばしばあります。小切手を
発行する際にその日の日付ではなく、将来の日付を書いておくもので実質的に
手形を切っているようなものですがこの場合、その日になるまで換金しないと
いうのは単なるマナーの問題であり、小切手は先日付になっていても銀行に
持ち込めば即現金化することが可能です。ただ一般に先日付の小切手を渡され
る相手は弱い立場の企業が多いので、マナーを守って期日までは銀行に取立て
を依頼しません。大きな企業は概してこういう先日付小切手だの、台風手形
(210日手形のこと)やお産手形(10ヶ月後)などの超長期の手形を切ったりだの、
更にはその手形をジャンプ(新たな期日の手形への書き換えること)させたり
など、かなりひどい下請いじめをしています。

小切手帳はアメリカではかなり個人の決済用に普及したようですが、日本では
ある程度銀行が信用した企業か、かなり預金をしてくれているお得意様にしか
発行されません。また商店などでも見知りのお得意様以外の小切手は受け取っ
てくれません。普通の個人が使用できる小切手は海外旅行用のトラベラーズ
チェックだけです。(現代日本では手形の場合も銀行が発行した用紙に記入さ
れたものでない限り無効です)

さて手形のもうひとつのバリエーションが為替(かわせ)です。これはAさんが
Bさんに対して債権を持っている時にCさんに「その代金はBさんが払います」
といって証書を渡すものです。この場合払ってくれるのがBさんですから為替
が利用可能かどうかはそのBさんの信用に掛かっています。

通常このBの位置には金融機関が来るわけで、Aさんは実際には銀行にお金を
払って為替を発行してもらい、Cさんに代金として送付ます。するとCさんは
その銀行に為替を提示して代金を受け取ればいいわけです。これは一般にAさ
んとCさんが離れた所に住んでいて、その銀行の支店がどちらの住んでいる所
にもある場合に成り立ちます。

(但し現代では金融機関同士が中央銀行の口座を利用して互いの為替を相殺し
 あうので同じ銀行でなくても取り立てが可能である)

私たち庶民は小切手は使用できませんが郵便局に行くと為替を作れますので、
それで送金をすることが可能です。これはしばしば公的な機関への手数料の
支払いに使用されています。

アメリカで運送業をしていてそれに付随する代金決済の処理から為替の取扱い
をはじめ、のちにはその金融関係のほうが本業になってしまい、最終的には
運送業のほうは廃業してしまったのが American Express (米国急便?)です。

以前は雑誌その他のアンケートなどに答えたお礼として郵便局の定額小為替を
送ってくる企業などもあったのですが、最近は多くのところが図書券などの
商品券を送ってきます。この商品券も為替の一種ですが、現金では受け取れず
受け取った側はかならず商品にしなければなりません。

商品券の日本での起源は江戸時代の鰹節(かつおぶし)屋さんであるといわれて
います。江戸時代に鰹節はお歳暮・お中元用としてスタンダードなものでした
が、ある年贈答のシーズンというのに、鰹が大不漁で、全然商品が足りないと
いう事態が起きたことがありました。そこで困った鰹節屋さんが考案したのが
「これをお持ち下さればいつでも鰹節と交換します」という商品券で、それを
贈答に使ってもらったのです。すると商品券が実際に鰹節と交換されるまでの
期間の余裕のおかげで、なんとか鰹節の数を間に合わせることができました。

今日日本で贈答用として流通している主な商品券は図書券とビール券、お米券
と思われます。テレホンカードも一時期かなり利用されたのですが携帯電話の
普及ですっかり姿を消しました。

さて手形や小切手は日本ではほぼ企業専用の決済手段となっているわけですが
それに相当する個人用の決済手段として現在特に普及しているのはクレジット
カードとデビットカードです。クレジットカードは手形に似ていて所定の期日
に代金が徴収されます。デビットカードの場合は使用した瞬間に代金が口座か
ら引き落とされます。ひじょうにマイナーですが小切手に相当するものもあり
チェックカードと呼ばれています。これはVISAのカード決済システムに乗って
使用されますのでVISAカードが使える所ならたいていのところで利用可能です
が(ETCなどは不可)、代金の口座からの引き落としはだいたい翌日です。

(ただし国内のチェックカードの唯一の発行元であるセゾンは現在このカード
 の募集を一時停止しており、このまま廃止するのか、現在多少問題とされて
 いる部分を改良して再開するのか言明していません。問合せに対しても沈黙
 を守っています。また東京スター銀行が同行の特徴的な口座スターワンに
 付加するという噂もあるのですが、これもまだ具体的な発表はありません)*1*2

アメリカではクレジットカードに似たものでセキュアカードというものもあり
ます。代金決済機能についてはクレジットカードと同じですが、クレジット
カードにはあるキャッシングサービス機能が付いていません。日本でもこの
形式でカードが普及していたら、いまほど借金地獄に苦しむ人が増えなかった
のではないかという気もします。アメリカではセキュアカードである程度実績
を積んだ人にしかクレジットカードは発行されません。

(2003-12-28)

(*1)2004年春から東京スター銀行はスターワン口座の所有者を対象に
同行のキャッシュカード(兼Jデビット)を兼用したマスターデビットカード
の発行を開始しました。マスターデビットはVISAチェックのマスター版で、
やはり即時引き落とし方式ですが、マスターカードが利用できる所であれば
たいていの所で使用できるようになっています。これを取得するには
スターワン口座の利用者または新規申込者が、マスターカードの発行を申請
することが条件になります。クレジットの審査が通る場合はマスターカードと
マスターデビットの双方が発行され、審査が通らない人はマスターデビット
のみが発行されます。

このため現在スターワンは人気商品となっており、某掲示板ではわざと自分の
財政状態を悪く申告して、マスデビだけGetしたというのを自慢したりする
人達も出没していたようです。それほど、クレジットカードのシステムで利用
できて即時引落し方式のカードというのは需要があるのでしょう。(Jデビット
はまだまだ利用できるところが限られているし何といってもネット決済が
できない問題がある)

(2004-06-11)加筆(2005-09-08)修正

(*2)クレディセゾンは同社の「郵貯チェックカード」の募集を2004年9月に
突如再開しました。代金の引き落としに関わる部分のシステムがより厳格に
改訂されており、不正行為ができにくくなっています。引き落としは原則とし
て使用後2日目ということになったようです。しかし万一引き落としできなか
った場合は通常のクレジットと同様の取り扱いになるということから、この
カードの審査をかなり厳しくしているようで、2004年10月現在、かなりの
確率で審査がはねられているようです。一時募集停止前は、全員という訳で
はなくても、たいていの人が契約できるカードだったのですが、再開後は
そうではなくなり、普通のクレジットカードに近いものになってしまった
ようです。

なお東京スター銀行のマスターデビットの方は、まだ発行されなかったという
報告は1件も来ていないようです。

なお、クレディセゾン以外に、りそな銀行かスルガ銀行がVISAチェックを発行
するのではないかという噂がありますが、まだ噂の領域です。またVISAチェック
カードを取得するもうひとつの選択肢はハワイのCentral Paciffic Bank(三井住友系)
に口座を作ることです。但し本人確認のため現地に行って手続きをする必要が
あります。

(2004-10-15)加筆(2005-09-08)修正


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