←↑→ (10)キャッシュレス社会とカード
昔は日本銀行は景気の冷え過ぎや加熱を調整するために公定歩合を上げ下げ
してきました。公定歩合とは日本銀行が民間銀行にお金を貸す時の基準金利
で一般の貸出金利もだいたいこれに連動するため、公定歩合を上げると金利が
高くなってお金が借りにくくなり景気の過熱は収まり、また景気が冷え込んで
いる時は公定歩合を下げてお金を借りやすくして消費を押し上げようとしてい
ました。現在の公定歩合は0.10%というとんでもない低い水準にあるにも関わら
ず景気は全く上昇する気配を見せません。下記は平成以降の公定歩合の動きです。

   1987.02     2.50%     1992.04.01  3.75%
   1989.05     3.25%     1992.07.27  3.25%
   1989.10     3.75%     1993.02.04  2.50%
   1989.12     4.25%     1993.09.21  1.75%
   1990.03     5.25%     1995.04.14  1.00%
   1990.08.30  6.00%     1995.09.08  0.50%
   1991.07.01  5.50%     2001.02.09  0.35%
   1991.11.14  5.00%     2001.02.13  0.25%
   1991.12.30  4.50%     2001.09.19  0.10%

(ブラックマンデーが1987.10.20。バブル経済は1987〜1991年くらい)

正直なところ公定歩合を0.5%に下げた時点でもう日銀としても景気に対して
手の打ちようがなくなってしまったという気がします。それ以降の引き下げは
「日銀は今の状態をよしとしていないぞ」というポーズを示すことによる心理
的な効果を狙った面のほうが大きいでしょう。この超低金利状態に合せて市場
では現在、時にマイナス金利(つまり借りた金額より小さい金額を返せばよい)
の取引まで現れています。

これは外国為替が絡んだ特殊なケースで利子を払ってもドルをほしがる人がいる
ので、その状況の中では結局金利がプラスだろうとマイナスだろうと、自分が
借りた金利より高い金利で誰かに貸せば、その利ざやが稼げるため、こういう
ことが成立するのです。

しかしマイナス金利などというものが現れることも、現在の不況の末期的症状
の象徴でしょう。ここまで日銀の公定歩合による調整が効かなくなったのには、
私は下記のふたつの原因があると考えています。

 (1)みんながバブル期に借りすぎをしているため、その借りすぎが清算されて
   しまうまでは、金融緩和されても新たに借りられるだけの余裕が無い。

 (2)そもそもキャッシュレス社会になって、現金のありなしが景気と無関係に
   なってきた。景気を決めるのは現金流通量ではなく、流通予測量である。
   つまり景気の先行きが良くなると国民が思わない限り景気は良くならない。
   →国民に夢を与え実行力もあるリーダーが登場しないとダメ。

キャッシュレス社会と言われ始めたのは1970年代の後半くらいからではないか
と思われます。それまで消費者が高額商品を買うときは「月賦」にすることが
多かったのを信販会社がその処理を代行するようになり、日本信販などの信販
会社が急成長していきます。販売会社にとっては代金が手数料をひいて一括で
入ることと、なかなか払ってくれない客に督促する作業が不要になるため加入
店は急増していきました。

日本信販はクレジットカード時代の到来を早期に見越して1961年には三和銀行
と共同でJCBを設立。これも日本のクレジットカードの代表格に成長させました。
JCBブランドでなく日本信販本体でもクレジットカードは発行していますが、
初期の日本信販のカードは商品購入の度に裏面の限度額欄に購入金額が書き込ま
れていました。こんなカードなら、かえって使いすぎも少なかったでしょう。

さて似たような感じのカードが世にあふれているのですが、だいたい下記のよ
うに分類できます。

 (1)キャッシュカード  銀行・郵便局の預金口座からお金を引き出すもの。
 
 (2)デビットカード   ほとんどのキャッシュカードはこれを兼ねている。
            商店で使用し、代金を即時口座から引き落とす。
 
 (3)チェックカード   クレジットカードのシステム経由で使用される
            即時引落しカード。処理の都合で実際の引落しは翌日。
 
 (4)クレジットカード  JCB,Visa,Masterに代表されるカードで一括払いを
            メインとするがリボ払いも可能。
 
 (5)信販系カード    信販会社が発行するカードで分割払い・リボ払いを
            メインとするが一括払いも可能。
 
 (6)流通系カード    大手の百貨店グループなどが発行するカードで機能
            は信販系と大差はない。三越お帳場カードなどは別格。
 
 (7)消費者金融のカード 元々は消費者金融のATMで借り入れと返済をする為の
            カードだが最近はVisaやMaster等を付けている物が多い。

特に1980年代は各社が激しい会員獲得競争をしたため、4〜5種類のカードを持っ
ている人はザラで、どうかすると10枚以上のカードを持ち歩く人もいました。
これが1980年代末〜1990年代初期に未曾有の「バブル経済」を招くことになります。

カードの中で使っても問題ないのは上記の(1)〜(3)のみです。しかし(2),(3)が
出てきたのはごく最近で、それまではキャッシュレスで商品を買うには(4)以降
のカードを使うしか選択肢がありませんでした。

この手のカードは支払いが使用した月の1〜2ヶ月後ですが、ここに最大の問題
があります。使用した分のお金を別途貯金しておいて、支払いに使用するのであ
れば問題ないのですが、それができるような意志の強い人は稀です。支払い月が
来てみると、その金額は払えても、それを払ったことで生活資金が不足してしま
うことがしばしばあります。本当は余裕をもって払えるはずだったのが、残業が
予想していたほどなくて給料の手取額が少なかったりする場合も多いでしょう。

そうなると、我慢できる物は我慢しますが、どうしても買わざるを得ないものも
あります。そして時代は電池1個や食品でもカードで買える時代。そこで結局、
本来ならクレジットを使いたくないような商品まで、不本意ながらカードで買わ
ざるを得ないという事態を引き起こしがちです。

このような状況がまだボーナスなどで清算できる内はいいのですが、そのボーナ
スが思った金額出なかったりすると、支払い金額自体が不足してしまい、その
支払いのためにクレジットカードのキャッシング枠でお金を借りるという事態に
陥りがちです。ここまでいくと地獄の自転車操業が始まってしまいます。1990年
代半ば以降に不本意に借金地獄に陥った人の大半がこういう経緯です。

だいたい自転車操業をしていても(変な所から借りていない限り)借金の総額
が年収よりも小さければ、節約生活を続けることで、何とか少しずつ借金総額
を減らしていくことができます。しかし、この時期は企業のリストラや賃金の
カットが相次いで収入が激減した上に、経済的に破綻する人が続出したことか
ら保証かぶりも頻発して、保証による連鎖的な行き詰まりも多発しました。

この保証人制度というのは日本独自の奇妙な習慣だといいます。起源は恐らく
江戸時代の「五人組」ではないかというのですが、アメリカでお金を貸すのに
保証人を求めても誰も保証人になどならないのでそんな制度は成立しないだろ
うといわれます。これはおそらく昭和30年代頃までの、まだ共同体の共存意識
が残っていた時代の遺物なのでしょう。

さて借金総額が不幸にも年収を超えてしまった場合、あるいは本来は充分返せる
つもりだったのが、収入の激減で結果的に返済困難になった場合、どうすれば
いいのか。

結局それはメソポタミア以来の返済不能な借金に対する基本的な社会制度:
「チャラにする」

ということしかありません。返せない人に返せといっても無理なわけで、
それは債権者に謝って勘弁してもらうしかありません。そして再起を促し
その人が再起して充分儲かったら、いろいろな形で返してもらえばよい、と
いうことになります。

現在国内でも大手に分類されているあるソフトウェア会社も初期の頃大きな
損失を出して、関係者に大きな債務を作り、いったんそれをチャラにして
もらったことがあります。しかし同社がその後ヒット商品を出して、大きな
利益をあげた時、同社は真っ先に、そのいったんチャラにしてもらっていた
債務を弁済しています。法的に借金を整理してしまった場合は逆に元の債権
者にお金をあとで渡すことはできませんが、その分、社会に貢献すればよい
でしょう。

さて、このようないったん整理するための道筋については次回。

(2004-01-12)

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