←↑→ (13)自己破産に関する様々な誤解
自己破産に関する最大かつ基本的な誤解は、少なくとも日本では破産は再出発
のための制度とされており人生終了の制度ではないということです。

自己破産したことによるデメリットは、ブラックリストに載ることで借金が
できなくなるということだけであって(*1)別に戸籍に記載されるわけでもなく、
公民権が停止するわけでもありません。(債務整理関係のサイトで戸籍に記載
されると書いている所が時々あるが誤り。市区町村の破産者名簿に載るだけで、
それも免責がとれたら抹消される。破産者名簿は一般の人は閲覧できない)

(*1)自己破産していても再起して大きな資産を形成するのに成功したら、ブラ
  ックリストなど無関係に、カード会社の方からカードを作ってくれと言って
  くるそうです。ブラックは様々な信用査定の材料のひとつにすぎません。
  自己破産する人はそういう自分を目指すべきでしょう。

一般に、事実上自己破産するしかない状況に陥っているのに自転車操業で借金
返済に苦労している人の多くが、「返さなければ返さなければ」という意識で
自分を縛ってしまっています。そして結果的には借金の額をよけい増やしてし
まっています。それは結果的には債権者にもよけい迷惑を掛けているのです。

そもそも高額の借金を抱えたままではその人がせっかく良い才能を持っていて
も、その人の資金が全て借金返済に消えてしまうため、建設的に使われること
もなく、それは人類にとっての損失です。

そういう人はいったん法的な借金は消去して身軽になってもらい、借金はでき
ないが自己資金を貯めさえすれば、すぐに自分の才能を生かした仕事をできる
ようにしたほうが、社会のためにはずっと役立ちます。自己破産はそのための
制度であって、債務のクリアは実は個人のためより社会のためなのです。

ですから自己破産した人にはそれまで以上に頑張って働いて、社会に貢献する
ことが求められます。破産は決して債務者を甘やかす制度ではないのですし、
破産で免責になって「助かった」などと思っていてはいけません。個々の債権
者にではなく社会に対してより重い責務を負うのです。

なお、今年成立するとみられている改正破産法では下記のような債務だけは
破産しても残るとしています。
 (a)酒酔い運転による交通事故などで相手に大きな怪我などをさせたり
    死なせた場合の賠償金
 (b)離婚した元夫が親権を引き継いだ子供を養育する元妻に払う養育費

なお、実際の自己破産(一般的な「同時廃止(後述)」処理の場合)の手続きは
次のように進行します。

 (1)自己破産の決意   この時点から以降は借金不可。返済も不可。
            (一部の債権者に返すのは不公平になるから)

 (2)自分で申告する場合は裁判所で用紙をもらい、裁判所が開いている
   講習などを受けて、それに記入するとともに必要な書類をそろえる。
   弁護士に頼む場合は弁護士の指導のもとでこれに記入する。
   
   ※弁護士に依頼した場合、弁護士が受任して債権者に受任通知を出した
    時点で債権者は直接債務者に連絡したり督促したりできなくなる。
    これは弁護士に頼む場合の最大のメリットである。

 (3)破産の書類を提出する。弁護士が提出した場合は1〜2度のやりとりで
   破産の手続きは完了する。自己提出の場合は3〜4度書類不備などで返さ
   れる場合もあるが頑張って修正して再提出する。自己提出の場合は受付後
   法廷に呼ばれて破産尋審を受ける(弁護士経由の場合は通常省略される)。

 (4)破産手続き完了と同時に免責の申請をする。だいたい破産決定の1月後
   くらいに免責尋審が開かれ、それにもとづいて免責の決定が下る。
   (一部免責といって、債務の3〜30%程度を返済したらそれと引き替えに
   免責になる場合もある。この付近は借金のできた事情と裁判官の裁量次第)

 (5)免責決定後1月で免責確定。これで全ての処理が終了する。

    なお破産申告して免責(一部免責を含む)が取れるのは95%.残りの5%
    は資産を隠して詐欺的に破産しようとした場合や、悪質すぎる場合。

「同時廃止」というのは分かりにくい用語ですが、元々破産というのは債務者
の財産を全て『破産財団』に移管し、それを売却して債権者に返済する手続き
です。しかし債務者に充分な財産が無い場合は、いちいち破産財団を作ってい
てはその費用のほうが高くつきます。そこで個人の破産の場合は大抵破産宣告
すると同時に破産財団を廃止してしまいます。これが「同時廃止」です。

これに対して工場主など、不動産を多く所有しているような人が破産する場合
は破産財団が作られます(管財事件という)ので同時廃止にはならず、財団の
活動が数年にわたる場合もあります。むろん破産のための費用も高額になります。

なお、現在、破産や免責の尋審は破産者があまりにも多いため、多くの裁判所
では法廷に何十人もの破産者を同時に入れて一気に処理しています。ほとんど
形式的なものになってしまっている訳で、現在審議中の改正破産法では、弁護士
経由で申請した場合は免責尋審も破産尋審と同様に省略可能にすることになって
います。東京地裁管轄だけで月に2600件(昨年10月の数字)もの破産の申請がされ
ていますので、裁判官の方もひとつひとつ丁寧には、とてもではないがやってら
れない状況になっています。

そのかわり多くの弁護士は債務者に、今後の借金無しでの生活の仕方に関する
アドバイスも含めて、なぜそんなに借金を増やしてしまったかの反省などを促し、
時にはお説教をしたりする、いわば裁判官の代理のようなことをしています。

そのような背景から、大都市では最近、弁護士を通さない自己破産の申請を、
嫌がる所も増えてきています。明確に拒否する裁判所も出てきているようです。
しかし弁護士に頼む費用(都道府県により違うが着手金30〜50万円)が本当に
作れない人にとってはこれは困ったことです。(本人申告なら費用は5万円)

弁護士費用がどうしても払えない人のために扶助制度というのもあるので
すが、破産者の急増のため、実はこの扶助制度自体が破綻してしまっています。
そのため、現在、扶助が受けられるのは原則として生活保護受給者に限られて
いますし、決定が出るまでにかなりの時間がかかります。その間、債権者から
の取り立てはどんどん来ますし、扶助といってももらえるわけではなく貸して
くれるだけですから後で返済の必要があります。現実的には扶助制度は無い
ものと思ったほうが良いでしょう。

つまり時代は「お金がないと破産もできない」時代へと進みつつあります。

ただ弁護士によっては着手金を数回の分割にしてくれる弁護士もあり、ちゃん
と払ってくれそうと思ってもらえたら1回目の分割金入金と同時に受任だけは
してくれる人もあり、そうなると債権者からの督促は止まります。通常債権者を
最も苦しめているのは督促ですから、こういう親切な弁護士を見つけられれば、
とても助かります。一般的には破産しようという人は毎月10万円以上の返済を
していた人が多いので、その分を弁護士費用に回せばだいたい3〜4ヶ月もあれ
ば着手金はそろうことも多いでしょう。生命保険に入っていた人はそれを解約
すると返戻金で払える場合もあります(*1)。ただし実際の破産手続きの開始は
着手金を全額払い込み終了してからになります(*2)。

(*1)返戻金が数十万円あった場合は、本来なら破産財団に組み込むべき資産と
   認定され、後で同程度の金額を払うことになるが、分割払い可能である。
(*2)こうしないと、しばしば残りの分割金を踏み倒そうとする破産者が多いから。

なお破産の手続きが免責まで完了した場合、本来は弁護士は免責された金額の
15%相当(債務が1000万円なら150万円)の報酬を破産者から払ってもらう権利
があります。しかし近年、債権者の借金をゼロにしておいて処理をしただけの
弁護士がそんなにもらっていいのか?という批判が高まり、地域によっては
報酬は着手金と同額にしてくれる所や、そもそも報酬を請求しないで、その分
着手金を少し多めに設定することにしている弁護士会も出てきているようです。


(2004-01-14)

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