ここで高天原の神々は天若日子の所へ使いとして雉鳴女(きぎしのなきめ)を遣わします。雉鳴女が「あなたの使命はどうしたのです?」と天若日子の家の前で問いただしますと、天探女(あめのさぐめ)が「あの鳥は不吉な鳴き声をしているから射殺してしまいなさい」と言います。そこで天若日子は天からもらっていた弓矢で雉鳴女を射殺してしまいました。
この時雉鳴女を射抜いた矢が高天原にまで達して、その矢を高産巣日神が拾いました。見るとそれは自分が天若日子に渡した矢です。そこで高産巣日神は「天若日子が使命を忘れておらずこの矢は誰か悪者が放ったものであれば天若日子には当るな。もし天若日子の邪心があればこの矢に当れ」と言って矢を下に落しますと、見事に天若日子の胸を射抜きました。(これを還し矢といいます)
天若日子の死を嘆く下照姫の鳴き声が天上まで響くと、天若日子の父、天津国玉神は哀れんで地上におり、わが子の為に葬儀の手配をしてやりました。その時、そこに当然下照姫の兄の味鋤高日子根神も弔いに訪れましたが、高日子根神が天若日子とよく似た風貌であったため、まだ地上にいた天若日子の父が「私の息子が生きていた」と言って抱きついて来ました。すると味鋤高日子根神は「間違えるな」と怒って、剣を抜いて喪屋を切り倒すという一幕もありました。
アマノジャク、というのは日本におけるトリックスターのルーツのようなもので、ある意味、後の彦一とか吉四六などに通じる部分があります。一般に、アマノジャクと瓜子姫、という組み合わせになるのですが、地方によっては英雄になっているところもあります。例えばある地方では、昔は太陽が3個あって、まぶしくてしょうがなかったので、アマノジャクがその内の2個を弓矢で射落としたといいます。弓矢を使うところなどは天若日子的でもあります。