世界の女神たち( 2)イシス

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written by Lumiere on 96/10/13 00:21
エジプトの神話はギリシャ神話や日本神話などと違って集大成されたような著 作が無く、どうも断片的な話が多いようです。実に色々な神格が存在し、その おのおのが万能神的な色彩を持っており、これらが元々は小さな部族の氏神で あったのが国の統合の過程で結婚したりきょうだいや親子になったりするとと もに、多少の機能分担をするようになっていったものと思われます。しかも、 同じ機能の神がまたウジャウジャいるような状況のようです。

そういった状況の中から、この大地母神イシス(正確にはアセト。イシスはギ リシャでの名称)にまつわるエピソードを幾つか拾い上げて行ってみましょう。

最初に混沌ヌンがありました。ヌンは「最初に生まれた古き者」とも呼ばれ、 4組の男女神の姿をしています。それは ヌンとネネト   深淵 ヘフとヘヘト   無限 ケクとケケト   暗闇 アメンとアメネト 不可視性 といったものです。

この混沌ヌンの中から、やがて丘の神アテム(「完成された者」の意)が生ま れました。アテムは宇宙の中で一人ぼっちでしたので、寂しくなってマスター ベーションをしたところ、その液からシュウ男神(大気)とテフネト女神(湿気) が産まれました。

この二人は結婚して大地の神ゲブと天の女神ヌトが生まれます。(男性優位の 社会では天が男で地が女だが、エジプトは日本と同様女性優位なので天が女神 である。古代エジプトでは女が立って男がしゃがんで排泄していたらしい。) そして、更にその二人が結婚して、オシリス・イシス・セト・ネプテュスの4 人のきょうだいが生まれました。この9神を「古代の9柱神」といいます。

このオシリスは妹のイシスと結婚し、宇宙の王になるのですが、その地位をね たんだ弟のセトはオシリスの体にぴったりの箱を作り、兄にそこに入ってみる ように言います。だまされるとは知らないオシリスが中に入ると、セトは箱の 蓋をしめ、ナイルに流してしまいました。そしてセトがオシリスに代わって王 となり、やはり妹のネプテュスを妃にしました。

セトの横暴は許せないと思ったイシスはオシリスに戻ってセトを倒してもらう ため、流された箱を求めて川下を探しまわり、ついに発見しますが、オシリス は既に息絶えていました。ここでイシスはオシリスの子供を産むことを決意し、 死んだオシリスの陰茎を手に取って自分の体内に導き入れ、射精させて子供を 妊娠します。そして生まれたのがホルスです。

ホルスはイシスの魔法の力によってパピルスの湿地の中に隠して育てられ、彼 が成人すると、イシスは息子を連れて神々の法廷に行き、セトの無法を訴え、 ホルスに王権を返させるよう申し立てます。これにほとんどの神は賛成するの ですがラーだけがセトの肩を持ちます。このため法廷は紛糾し100年程もめ た末、セトとホルスのだまし合いのような政治的争いを経て、ようやくホルス はセトを退けて王位につくことができました。

イシスはこのセトとホルスの長い年月の争いの中でも何度も魔法を使って息子 を助けているのですが、イシスと魔法という関係はかなり深いものがあったよ うで、イシスは「魔女」の原型のひとつであるようです。

彼女の部下はサソリで、イシスは外出する時に7匹のサソリに警護をさせ、サ ソリの毒を自由にコントロールすることができました。この力によって、ある 時イシスは太陽をサソリたちに襲わせて瀕死の重傷にし、死にたくなかったら 自分の「まことの名」を教えるように、と脅迫し、まんまとそれを聞き出して 以後太陽を自由に操ることができるようになったとされます。

なお、この物語の中であっけなく死んでしまったオシリスですが、死後冥界の 王になったとされています。アニのパピルスに記された死後の世界の話では、 冥界に行くと中央にオシリスがいて、正義の女神マアトが生前の罪の重さを天 秤ではかり、ホルスとトトとセトまでもが陪席裁判官となって死者を裁くと語 られています。またセトはオシリスの支配する冥界にもホルスの支配する現世 にもいれなくなって、その境界の所に怪獣に姿を変えて住んでいて、冥界へ行 く途中の死者を苦しめるという説もあります。

イシスとオシリスの物語は神話とも伝説とも昔話ともつかない形で語られてい ますが、古代の実在の王がモデルではないか、という意見もあるようです。

なお、前回ふれたイシュタルですが、エジプトにもアスタルテの名前で入って きており、セトの娘でホルスの妃の一人とみなされているようです。


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