世界の女神たち( 3)セドナ

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written by Lumiere on 96/10/13 05:19
エスキモーの世界ではセドナと呼ばれる女神が広く信仰されています。

セドナは海底の深いところに鯨の骨で作った家に住んでいる醜い老婆です。女 神様にはアフロディーテのように美人という属性がつくこともあるのですが、 このセドナやギリシャの運命の三女神のように醜いという属性がつけられるこ ともよくあります。

セドナはアザラシや魚の管理者で、人々に食料の恵みをもたらしてくれる存在 ですが、一方では非常に気まぐれな存在で、彼女の機嫌をそこねてしまうと、 全く魚が取れなかったり、海が荒れて命を落としてしまうこともあります。

人々は死ぬとみんなセドナの所に行くとされます。つまり彼女は冥界の管理者 でもあります。海の管理者が冥界の管理者でもある、というイメージ連関も自 然な発想でしょう。海というのは交通と食料を与えてくれる一方命を奪うもの であり、それは人類を生み出したものであるとともに、そこに帰っていく存在 です。そして、海というのは人間が把握できないものの代表でもあります。

セドナは最初から女神だったわけではなく以前は人間の娘であったとされます。
その時代を語るエピソードが伝わっていますので紹介しましょう。


セドナは古い種族の人間の娘でしたが、誰とも結婚したくないと主張しました。
そこで父親は娘に罰として犬と結婚させました。彼女は犬と暮らすうちに子供 を何人か産みますが、生まれたのはみな子犬でした。彼女の夫の犬は毎日彼女 の父親のところに食糧を貰いに行っていました。

ある時、セドナの前に若い男が現れ、自分と一緒に来いと言います。セドナは 男に一目惚れしてついて行きますが、男は実は阿呆鳥でした。こんな男と暮ら すのは嫌だなと思い始めた頃、父親が彼女を連れ戻しに来ました。娘はこれ幸 いと一緒に逃げますが男も気づいて追いかけて来ます。しかし父親が必死に船 をこいだので、次第に離れて行きました。そして男の船が見えなくなった時。
突然船は大嵐にあいました。

父親はこれはあの男が娘を取り返す為に起こしたものだと感じとり、この嵐を 抜け出すためには娘を捨てるしかないと考えました。そこで娘に男のところに 戻るように言いますが娘はいやだと言います。そこで父親は彼女を船の上から 突き飛ばしてしまいました。

セドナは必死に船べりにしがみつきますが、父親は娘の手を石で打ってつぶし、 かいで左目を打ってつぶしたところ娘は沈んで行きました。そして彼女が海に 沈むと同時に嵐はやみ、父親は無事に家につくことができました。

家につくと、セドナの本来の夫の犬が彼女の帰りを待ちわびていました。犬が セドナは見つかりましたか? と聞きますと、父親は心にやましいところがあ るので、犬を水におぼれさせて殺してしまいました。

セドナが産んだ犬たちは自分たちで勝手に船をつくり、海を渡ってほかの島へ 行ってしまいました。そしてこの犬たちが現在の人間の先祖になりました。

(つまりセドナは人間の始祖神ということにもなります)

さて、父親に殺されたセドナはそのまま海底まで沈んで行きました。彼女はそ こで海底の石や鯨の骨などを使って家をつくり、そこに住むようになりました。
そこへやがて夫であった犬も沈んで来たので、彼を家の門番にしました。

海に大きな波が起きました。セドナの父親は家ごと波にさらわれて死んでしま いました。家はそのまま海底に沈んでいき、セドナの家の前におりてきました。
そこでセドナは父親を家からは出さずに、家ごと自分の家の中にひきいれ、封 印をしてしまいました。このため彼女の父親はもう家の外に出ることはできま せん。

このあと、セドナは海底の死者の国の管理者になりました。彼女が父親に殺さ れたとき、つぶされた指の先がちぎれたものが海獣に変化しました。そのため 彼女は海獣たちの産みの親であり、支配者です。そして自分の子孫である新し い人間たちに食料としてその海獣を恵んでくれるのです。またセドナは嵐の支 配者でもあります。セドナのかつての夫であった門番の犬は現在は死者をセド ナの所へ道案内してくる役をおおせつかっています。


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