世界の女神たち( 8)魔女の系譜

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written by Lumiere on 96/10/28 03:51
聖書をよく読んでおられる方、映画「十戒」を見られた方はシナイ山でモーゼ が神から十戒をさずかって降りて来たとき、アロンたちが牡牛の像を作って祭 りをしていたのを見、怒って十戒の石板を投げつけるシーンがあるのを覚えて おられるでしょう。

この牡牛の像というのは、もしかしたらイシュタルを祭っていたのかも知れな いという説があります。一説によればモーゼが人々を率いてエジプトからイス ラエルの土地まで行ったころは、イスラエルの民の中にもヤハウェを信仰する 者、バアルを信仰する者、イシュタルやイシスのような女神信仰の者などが入 り乱れていて当初はユダヤ教の指導者たちもそれに寛容であったのが申命記革 命の頃から空気が変って来たとも言います。

またローマでAD313年に「ミラノ勅命」が出てキリスト教が国教となり、 その 後他の宗教が抑圧されていくようになる前は、ローマ帝国の中でさえミトラ教 はもちろんのこと、バアル、アラー、キュベレ、ディアナ、など男神・女神を 問わず色々な神が信仰されていたようです。しかしその後のキリスト教はどん どん厳格化の道をたどり、特に381年のコンスタンティノーブル公会議以降は、 他の宗教の徹底的弾圧を始めるようになります。

その結果、ミトラやバアルなどの男性神はその性格をヤハウェの中に吸収され ていきますが、女神は神の座を追われ、上記コンスタンティノーブル会議で採 用された三位一体説が父なる神・子なるキリスト・精霊という女性的要素の無 いものであったこと、また「罪深きイヴ」という形で女性は汚らわしいものと いった概念が確立していったことにより、これらの女神は魔女とされていった のです。

そんな中で特に魔女的要素の強く、魔女の元締のように考えられた存在はディ アナ(アルテミス・セレネ)、ヘカテ、リリスあたりでしょう。なかでもリリ スは最も凶悪な魔女と考えられたようです。

リリスの名前はメソポタミアの神話の中に少しだけ見えます。彼女は荒野又は 木の洞に住んでいて、翼を持ち飛び回るとされています。

リリスはカバラ神学の中ではアダムとともに作られた最初の女とされました。
これは聖書の記述で創世記第1章で「神は御自分にかたどって人を創造された。
神にかたどって創造された。男と女に創造された」とあることから、その後の 方でアダムのあばら骨から作られたイブではない女がいたのだ、という解釈が 生まれたことによります。

(実際「男と女に創造された」は6日目のできごとですが、イブが作られたの はアダムがエデンに連れてこられて耕作を命じられた後になっています。)

秘教的解釈では、リリスはアダムが男性上位のいわゆる正常位でしか交わろう とせず騎乗位を取ろうとしたらアダムが拒否したため、これに反発して、飛び 去ったとされます。そこで仕方無く神は残されたアダムのためにもっと従順な イブを作ったのだというのです。

もっともグノーシス派の中には逆にイブにこのような主体性を持たせた神話を 持っていたものもありました。それによると最初に作られた人間はイブであり、 それに対抗してカオスの支配者がアダムを作ったとします。しかしアダムは単 なる泥人形に過ぎなかったのを、イブがその中に魂を吹き込んで自分と同等の 人間に変えたというのです。それを見たカオスの支配者はイブの力を恐れ、ア ダムの支配下に置いてしまおうと考えアダムにイブを犯すよう命じますが、イ ブは自分のコピーをアダムのそばに置き、立ちさってしまいます。この話はケ ルト思想の女王の愛があってこそ王は王権を得られるという考えと同類ですね。

さてキリスト教側の解釈に戻りますと、飛び去ったリリスをシノイ・センシノ イ・セマンゲラフという3人の天使が追いかけ、神に従わなかったらお前の子 供を毎日100人殺すと脅したため、リリスは一応神への服従を約束します。
ただしその交換条件として、イブの子孫の子供たちが生まれてから数日間はリ リスの支配下に置かれるという約束も得ました。リリスは時々この権利を行使 して生まれたての赤ん坊を苦しめて遊ぶこともあるといいます。

リリスはまた自分の子供たち(リリン)を人の夢の中に派遣して誘惑をすると いいます。中でもインキュバス・サッキュバスという夢魔は有名です。ここで サッキュバスは女の姿をしていて睡眠中の男と交わり精液を溜めていきます。
そしてたくさん溜めたら男の姿をしたインキュバスに変身し、睡眠中の女と交 わって溜めた精液を使うというのです。このため中世の修道士などの中にはサ ッキュバスに襲われないようにするおまじないとして、自分のペニスに十字架 を巻き付けて寝ていた者もあったとのことです。

このような魔女に関する思想がキリスト教がヨーロッパで覇権を取ったあとも ずっとくすぶり続け、それはやがて13世紀頃から始まり16世紀〜17世紀 にかけて凄まじい数の犠牲者を出した大規模な魔女狩りへと発展します。そう いった動きにストップを掛け、教会を権力の座から引き下ろしたのは近代合理 思想でした。

近代合理思想は古い女神信仰的なものはもちろんキリスト教的な思想までも表 舞台から引きずり下ろし、「科学」という新しい宗教にもとづいて全宇宙を支 配しようとしていき、やがて悪魔の発明ともいうべき核兵器を生み出すのです。

さて、Stargazerをお持ちの方は1186.9.23 23:45東京のホロスコープを出して みて下さい。当時は天王星以遠の星は見つかっていませんから、7惑星の状態 ですよ。さて、このチャートをどう見られるでしょうか。

これは当時相当のパニックを引き起こした「トレドの書簡」という本が予想し た「世界終末図」です。この「世界終末」の後に起きたことを次回は追いかけ て行きましょう。


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